社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜

デスクに戻ろうとすると、こちらを見ていた島田さんが「ねぇねぇ」と言って私を手招きしだした。

「はい。島田さん、どうかしました?」

イスの背もたれに手をかけてそう問いかけると、彼女は「座って座って」と言って私のイスを指差した。言われた通りに椅子に腰をかけると、口角を上げた島田さんが私の目をじっと見つめてくる。


「ねぇ、今週末空いてる?」

大きくて丸い瞳をこちらに向けてくる彼女に、ほんの少しだけ嫌な予感が働いた。

「空いてます、けど……」

「本当⁉︎ そしたら、空けておいてくれない? 深川くんは来ないんだけど、営業部の人と飲み会の予定があって。そこに、どうしても美帆ちゃんに来て欲しいの!」

仕事の話ではなさそうだし、恐らく飲み会の誘いではないか。そんな予感はしたけれど、まだそうと決まった訳でもないし嘘をつくのもなんだか申し訳なくて素直に予定がないことを答えてしまった私は、そのことを早くも後悔した。


「えっと……」

「深川くんのことが気になるなら、私から説得しておくから!ね?」

お願い、と言って顔の前で両手を合わせる彼女は、私の意見を聞いているようで強引だ。

もう、目や口調から分かる。私に首を振らせるつもりなんてきっとない。

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