社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜

「あ、清水。うん。大丈夫」

ハーフのような顔立ちをしたその男は、私と真樹と同期の清水秀太。

私が彼に大丈夫だと返し、一度真樹の方を見てみると、真樹はにやにやと笑みを浮かべながら「ドンマイ」と口パクで言う。


自分で言うのも何だが、清水は私のことが好きらしい。いや、〝らしい〟というか、完全に好きだ。だって、実際に何度も告白されているのだから。

それを知っているというのに、彼は、私が清水と二人きりになる事を面白がって笑っている。


「それじゃあ、またね。真樹」

一応彼氏だというのに、完全に面白がっている彼に腹を立てながらも、私は作り笑いを浮かべて真樹に手を振った。


「本当に仲が良いんだな」

真樹が去ったことを確認すると、隣に立つ清水がぼそりと呟くように言った。


「そりゃあ、恋人同士だからね」

私がそう返すと、彼はやはり複雑そうな表情を浮かべる。眉間にしわを寄せて、そうかと思えば眉尻をぐんと下げた。

何度も断っているはずだけれど、どうして私なのだろうか。そう思わずにはいられない。


「この資料なんだけど、昼までに50部コピーしておいて」

「あ、うん」

「それだけ。よろしく」


私に書類を手渡した彼は、すたすたとこの場を去っていく。私は、そんな彼の姿を背に歩き出した。

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