社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
突然出てきた清水の名前にぽかんと口を開けて驚くと、何故か真樹の方まで驚いたように目を丸くした。
「待って、どうして私が清水のこと好きだなんて話になるの」
「え、前に言ってた好きな人って、清水のことじゃないの?」
目の前できょとんとしている彼は、どうも私が清水に恋をしたと勘違いしていたらしい。
確かに、清水と二人で話すことなんて何度もあった。だけど、ここまで勘違いさせていたとは思いもしなかった。
「違うよ。清水じゃない」
「それなら、河合さん、誰にリアルな恋しちゃったの?」
「え、だから、それは……」
ここまで来ても分からないなんて、どれだけ鈍感なんだと思ってしまったけれど、彼が鈍感なら私も鈍感か。
「言ってくれないと分からないんだけど」
「だから……」
〝真樹のこと〟だと答えれば良いだけなのに、それがなかなか言い出せない。
こんなに恥ずかしくて、でも、幸せで。言いたいのに言い出せない、こんなもどかしい気持ちはいつぶりだろう。
「私も……真樹と、同じ気持ちだから」
意を決して、言葉を発した。だけど、今の私にはこれが精一杯だった。
「ギャルゲーとか専門外だけど、ツンデレ女子ルート完全攻略って感じじゃない? これ。まあ……それにしても、なんかパッとしないなぁ」
もっとはっきり言って欲しいんだけどな、なんて言った真樹は完全に恥ずかしがる私のことを面白がっている。
彼は、優しいのか意地悪なのか分からない。普段は大人だし優しいくせに、時々、こうして私の痛いところを突いてからかってくるから本当にタチが悪い。
「まあ、河合さんにしては良く出来た方か。今日のところは勘弁してあげる」
「な、意味分かんない。あんた一体何様のつもり?」