【中編】彼女様は甘い味。




無関心そうだった蓮二の顔はどんどん困ったような面倒そうな、

そんな表情に変わるのだ。


「京、香さん…?あの、その…泣かないで、下さいっ」

蚊鳴くような声で遠慮がちに奏音は言う、


けど京香にとっては『敵に情けを掛けられた』となるらしく…キッと奏音を睨み付けると歯ぎしりをする。



こ、怖いです…ね、


一歩だけ後ろに下がるあたし。



もう完全に敗北ですよ…


ってこれって勝負だったわけ?なんて突っ込みたくなるけど、

仕方ない…か。



「情けは無用よっ!」

「…あ、」

「消えて」

「へ?」


口を少しばかり開けたまま首を傾げる奏音。

しかしそんな態度が更に彼女の内に秘めた性格を剥き出しにさせてしまいまして…



「だーかーら!!
消えろって言ってんのが分かんねぇのかよ!?ウザイんだよ、目障りなんだよっ!」



京香、さん…??


「……。」

驚きと恐怖のあまり声も出ずに目を見開いたままのあたし。



「始まった…」

蓮先輩は、ハァッと深い溜め息をつくと額に手を当てて目を瞑った。


何か…知っているようですね??

そう思い口を開く、



「『始まった』とは…?」

「コイツがキレて泣くと…本当、タチ悪ぃんだよ」



タチが悪ぃ…?

心の中で自分自身に問い掛けてみる。


そんな時でした…



「……っ!」


襟元を掴まれたあたしは、そのまま地面に突き飛ばされてしまい。

衝動的に瞑った目を開くと、そこには鬼のような顔をされている京香さんがいらして…



「おい、京香っ!」

先輩はそう言うと京香さんを止めようとその腕を掴む。


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