コバルトブルーの誘惑
嶺緒は自分の隣に私のカップを置き、
「座って」と微笑む。

嶺緒の横に私が少し離れて座ると、笑顔で私の腰を抱き寄せ、

「そんなに離れて座らなくてもいいよね。」と私の瞳をジッと見る。

「食事を続けてください。」と言うと、

「このままそばにいて」
と私から手を離さずに片手を使ってサンドイッチを口に入れる。
密着具合が恥ずかしい。

「…ここは会社だけど…」

「今は休憩時間」

「…」うーん。と私が悩んで俯いていると、あっという間にサンドイッチを食べ終わり、

「舞、仕事どう?」と紅茶のカップを持って飲み、ふーと息をついている。

「サラさんが丁寧に教えてくれる。」

「サラは仕事が出来る。」と笑って紅茶のカップを置き、

「舞の淹れてくれる紅茶はホッとする。」と両手で私を抱きしめる。


「…嶺緒、駄目よ。」

「もう少しだけ…舞がここにいることの確認」
と笑った声で言って、ギュッと力がこめられる。
私は身動きできずにジッとしている。

私のドキドキしている音って嶺緒に聞こえないかな?と少し不安になった頃、

「舞が好き。そばにいてほしい。」

と言う声が聞こえて私が返事が出来ずにいると
嶺緒はゆっくり私の身体を離した。

「舞も紅茶を飲んで。美味しいよ」と嶺緒は私をブルーの瞳で見つめながら、カップの横に添えられたクッキーの袋を開けて、口にいれ、

「懐かしいな。子どもの時に食べた。」と私に笑いかける。

よかった。
すこし、和んだみたいだ。

「いただきます」と私は美しいカップに口を付けた。





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