はじめて知った世界の色は
追憶のジェムシリカ


◇◆◇◇


そして月曜日がきて、また1週間がはじまった。

正門で登校指導をしている先生たちも朝練ですでに疲れている陸上部の人たちもなにも変わらない。

ごく普通の学校の風景。

だけど今日はひとつだけ違うことが……。


「翠おはよう。あれ?元気ない?」

昇降口で由実が声をかけてくれた。


「元気だよ!元気なんだけどさ……」

「?」

私の傍に緑斗の姿はない。


昨日から続いていた熱は結局下がらなくて、むしろ今日のほうが悪化してるかもしれない。

だから今日の緑斗はお留守番。

もちろん緑斗は「大丈夫、学校に行く!」と意地を張っていたけど、「そんな身体で来られても授業に集中できない!」と言い返して置いてきた。

まあ、それはそれでひとりで大丈夫かな、とか心配でこうして由実に変化を気づかれてしまってるんだけど。


……今日は早めに家に帰ろう。

私がいても出来ることなんてないけど、風邪の時は心細くなるものだし。

< 119 / 180 >

この作品をシェア

pagetop