はじめて知った世界の色は


お姉ちゃんは私の手をぎゅっと握って、久しぶりに自分以外の人の体温を感じた。


「私ね、大学生になって、いい会社に就職して、親孝行がしたい。そんな気持ちで頑張ってたけど、本当はどこかで満たされない気持ちもあったの」

繋がってる手から伝わるお姉ちゃんの気持ち。


「実はある会社からうちに来ないかって誘われてて。それはお母さんやお父さんに親孝行できるような会社じゃない」

「……え?」

「お給料も安いし、小さな子会社だし、世間的に目立った商品を開発したこともない。それでも私の成績や実績じゃなくて、私の人柄を見て一緒に働きたいって言ってくれた。……それを聞いた時、心がスッと軽くなった」


お姉ちゃんはとてもいい顔をしていて、それは今までにないってぐらい。

「それを今日お父さんたちに伝えにきたんだけど、まだ言えてなくて」と困ったように眉を下げる。


その本当の気持ちを両親ではなく、私に一番最初に話してくれたこと。

それがどんな意味を示すのか、私はもう分かってる。
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