スキ、だけじゃきっと


「……そんなに気になるならなつめちゃんに直接聞きに行けば?」

「は?お前が中途半端な言い方するから気になるんだろうが!言えよ、最後まで」

「てか、普通あそこまで言ったら勘付くでしょ?察してよ普通に」

「何で若干 キレてんだよ、俺この短時間にお前に何かした?チャリこがせてるくらいだろ?」


あー言えばこう言う。
そう言うとこ、本当に嫌いだよ藤井。

だけど、やっぱり。

なつめちゃんにこのまま取られたくないって、心の中でモヤモヤ黒い感情に飲み込まれそうな自分は、藤井の事が好きで。


「藤井は鈍い!鈍すぎる!」

「意味わかんねぇ、さっきからお前なんだよ」

「腹立つ。ほんっと何様よ、藤井のくせに」


言いたくない。

藤井のことが好きなんて。

本当はこうして毎日 同じ方向ってだけで一緒に帰れる関係が嬉しいなんて。

藤井の笑った時に出来るエクボを可愛いって思ってるなんて。

藤井のこと独り占めしたいなんて。


絶対、言いたくないけど。


「お前の鈍さには負けるっつーの!」

「はぁ?私の何が鈍いのよ!」

「猛烈に鈍いだろーが!この運動音痴」

「藤井……その鈍さじゃねぇし!鈍臭いのと鈍感なのと、違う種類の鈍さだし!そういう所だよ」



言葉にして伝えなくちゃ、この鈍ちんには伝わらないってことくらい私だってとっくに分かってるんだ。


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