幼なじみじゃ、なくなった夜。





「偶然ですね、瀬戸内先輩も残業ですか?」



「まぁ…そうだね」




あー…なんとなく、今一番会いたくなかったのになぁ…。



なんて失礼なことを思いながら、曖昧に愛想笑いする私。




「途中までご一緒してもいいですか?」



「え?あ、あぁ、うん」




そしてなんと一緒に帰ることになってしまった。




コツコツとピンヒールが鳴る度に、足立さんの綺麗にハーフアップにされた巻き髪が揺れている。




今日も女子力最強だ。





「金曜日は大変でしたね」



しかもいい匂いするし、なんて変態チックなことを考えていると、足立さんが不意に私の方を見たのでドキッとしてしまった。



「金曜日?」


「はい。浜崎先輩に絡まれてたでしょ?浜崎先輩、普段はいい人なんですけど、女にはちょっとだらしないんですよねぇ」


「あ、そうなんだ…」



ほぉ、と憂いを帯びたため息を漏らす足立さん。まるで何か思うことがあるかのように。



浜崎先輩、同じ営業だし、こんなに可愛い足立さんにはもちろん手、出しちゃってそうだなぁ。




「…でも。よかったですね、榎波先輩が助けてくれて。私、惚れ直しちゃいました」



「……あ、そっか…」




…そっかって。なんだよ、私。と思ったけど。



他に何を言ったらいいかわからなくて。舞い降りる沈黙。





< 139 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop