極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
まったく。
これはどうフォローしたら良いものか。

こんなに負けず嫌いだとは思わなかった。


「よし。ではここはひとつ、勝負は有効ということにして、願いを叶えてもらいましょう」


そうでもしないと収集つかない。
顔を歪ます紬から、舞台上に視線を向け、コホンと咳払いをしてから願いを申し出る。


「今後の打ち合わせは一階の喫茶店にしてください」


そうすれば恐怖の全面ガラス張りのエレベーターに乗る必要はない。
この勝負に勝ちたかったのはその条件を飲んで欲しかったからだ。


「それは却下」
「じゃあ一階に社屋を構えてください」


却下された場合のことも考えておいた。
でもそれも「不可」らしい。
社屋を構えられるほどの財力とスペースがあることくらい税理士だから分かるのに。


「まぁ、でも仕方ないですね。これも無理ならいいです。私の願いはそのふたつだったので」
「それなら俺が言ってもいいか?」
「なぜ?」


負けたのに。
なにを突然言い出すのかと呆れを通り越して笑ってしまう。

そんな私を紬は見下ろし、そして私がしたのと同じように舞台上を見ながらひとつ提案した。


「きみの高所恐怖症を克服する手伝いをしよう」
「それこそ…」


却下。
そう言いたかったのに紬に言葉を遮られてしまった。


「大丈夫だ。きっと克服できる。俺に任せろ」

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