極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~

「他の人の分はないからみんなには内緒なんだ」


コソッと小声で言われて、慌てて口を手で押さえる。


「東さんが『楓先生と召し上がってください』って言ってくれたんだよ。だからもし手が空いてるならみんなが休憩室を使わない今の時間に一緒に食べよう」


コクリと首を縦に振って頷き、メールを閉じてから、桧山さんのあとに続いて静かに休憩室に入る。


「ふぅ。なんか皆さんには申し訳ないですね。このお店のケーキ食べてみたいっていう人、多いでしょうから」
「そうだね。でも2個しかないから仕方ないよ。ゴルフコンペを頑張ったご褒美だと思おう」


なるほど。
その名目があれば多少の罪悪感は薄れる。
コーヒーをふたり分淹れて、桧山さんが箱から取り出してくれたケーキの横に置く。


「ありがとう」
「いえ。それより先週末はお疲れ様でした。あのあと東さんは大丈夫でしたか?」


私が紬を送って行ったように桧山さんは東さんを送って行った。

ただ、なかなか止まない雷の音に耳を塞いで怖がっていた東さんのことが気になっていたのだ。


「帰りの道中も雷、かなり鳴ってましたよね」
「そうだけど…もしかして楓ちゃんはあれが彼女の演技だって気付いてなかったの?」

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