極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「ちょ、ちょっと待ってください!たしかに契約を切られるかもしれないと言ったのは私ですが、昨日の今日で、しかもなにも解決していないのに担当を変えられるのは納得出来ません」
せっかく認められて今まで順調にやってきたのに、気まずくなっただけで交代するというのは違う気がする。
「私はただそういう恐れがあると伝えたかっただけです」
なにもそこまで焦る必要はないと言うように所長に言うも、呆れたようにため息をつかれてしまった。
「契約を切られるかもしれないと勝俣くん自身が感じたほど先方を不愉快な思いにさせたんだろ?でも原因が分からない。だとしたらこれ以上、溝を深める前に行動するしかないだろ」
「それはそうかもしれませんが、早急に担当を変わる必要がありますか?」
納得がいかず上げ足を取るような言い方をする私に所長の容赦ない言葉が飛んできた。
「税理士事務所に限らずどこもそうだが、仕事は信頼関係の上に成り立っている。その関係が崩れ、きみが危惧している通り、契約が切られたらどうなる?話をくれた銀行側からも信頼を失うだろ。そんなことも分からないのか」
所長の強い口調にその場にいた職員も何事かとこちらを見た。
でも所長の口は止まらない。
「それと、悪い噂は一気に広まるんだ。特にナカツガワの会社は注目されてる会社だから余計に広がるのは早い」
ゴルフの時に、紬の元へ他社の関係者が集まっていたことは記憶に新しい。