極甘求婚～クールな社長に愛されすぎて～

「私はこれでも緊張しているんですよ。でも仕事を疎かには出来ませんから。所長にも口酸っぱく言われていますし」


公私混同はするなよ、と所長に言われたことを思い出し、ぴっと背筋を伸ばして言うと、紬は柔らかく微笑んだ。


「それはそうだな。すまない。中断させて。作業を続けてくれ」
「あ、でもその前に上場の件、再度お話を伺ってもいいですか？」


所長に話が途中になってしまったから聞いて来いと言われていたんだった。


「もし本気でお考えなら先日所長がお話した通り、担当は所長に代わります」
「それは分かった。だが、そうなった場合、きみはあの事務所を辞められるのか？上場した場合、きみをこの会社の常勤の税理士として雇いたいという気持ちは変わらない」


真剣な表情に言葉が詰まる。

紬の元で働きたいとは思うけど、所長の元で勉強したいことも山ほどあるから。
特に今回のことで所長から怒られたとき、自分の未熟さを痛感した。
今のままでは紬の力にはなれない。

だから即答することは避け、データに目を下ろす。

すると画面上に出ていた売上の数字を見て違和感を感じた。


「ん？」