リト・ノート


「健吾は美雨を好きなんだろうなって気づいてたけど、美雨のほうは違うんだと思ってた。相談してるうちに好きになっちゃったの? 私のせいで付き合えなかったってことなの? 私、ちゃんと聞いたよね? 健吾を好きなのとか、付き合ってるのとか」

その通りだった。沙織は何度も聞いてくれた。美雨だけが悪かった。正直に話をしていたら、きっとこんなことにはならなかった。

「ごめん、私、」

「今何言われても信じる気ないから。勝手に健吾と付き合えば。私を悪者にしないでよね」

沙織の目には涙が浮かんでいた。怒らせたんじゃない、傷つけたんだとわかった。2人がかりで沙織を裏切って、沙織のせいにしようとしてるって。

今さら美雨は理解した。リトのことなど関係なく、羽鳥を好きだと言うべきだった。

いったいいつ言うのが正解だったのかはわからないけれど、とにかくもっとずっと前に。

いつから好きだったのか自分でもよくわからないけれど、でもとにかくもっと前に。


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