僕が小説を書くように
恋心と下心
「それより、きみは帰らなくてもいいの?」

 時計は、もう十時を回っている。
 年長者の責任として、きいてみる。

「うーん……いいです」

「ご家族が心配するだろうに」
 期待半分、不安半分。

「あれ、言ってませんでしたか?
 わたし、ひとり暮らしなんです」

「あれ、そうだったっけ」
 期待のほうが膨らみ始める。

「……決めた!
 今日は、先生のそばにいますよ」

「えっ、本当に!?」

「ええ、先生のことが心配ですから」

 彼女は、すっと立ち上がった。

「お風呂場、お借りしますね」
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