僕が小説を書くように
彼女がくれたもの
 夜、僕は自宅で、パソコンのキーを叩いていた。

 締め切りが決まっている、月刊誌のエッセイの仕事だ。

 ようやく一区切りつき、眉間をもむ。ここ数年で、頑張りすぎると肩と目の調子が格段に悪くなってしまうようになった。

 寄る年波には、勝てない。

 しばらく、ディスプレイから目を離し、ぼんやりとしてからおもむろに原稿のデータを送信した。

「……つあ~っ!」

 ひとりで叫び、思い切りからだをのばす。

 仕事を終えた達成感に、勝るものはない。

 さっそくウイスキーの瓶とつまみのチーズを取り出し、いそいそと酒盛りを始める。

 オヤジくさい?
 そのとおり、僕はオヤジだ。

 ふと、机の上に乗せた封筒に目が行く。

 記憶をたぐりよせ、女の子の顔を思い浮かべた。
 不思議な子だった。うちの学生じゃないような……。

 グラスを置いて、封筒に手をのばし、開封する。

 やはりというべきか、原稿用紙の束と、手紙が入っていた。

 こういう子は、たまに現れる。
 僕が作家だと知っていて、原稿を読んでもらい、感想をききにくるのだ。

 最近は、そんな子も珍しくなってしまったが……。

 まず、手紙から開封するのが筋だろう。

 僕は便せんを広げ、読み始めた。
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