ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
再び深い溜息を漏らすと、彼に抱きしめられる。

彼の胸の中でさっきの言葉が何度も頭の中でリピートされていく。

謙信くん、私のこと大切にしたいって言ってくれた。我慢するって。そんなこと言われたら、やっぱり期待しちゃうよ。

少しは私のこと、妹としてではなくて女性として見てくれているかもしれないって。

だったら私……!

「け、謙信くん……っ!」

「ん?」

頭上から聞こえてくる彼の声。必死に顔を上げ言った。


「がっ我慢しなくてもいいよ? 私は謙信くんのことが好きだから……! だから全然!!」

むしろ女として意識してもらえるなら……!!

捨て身の覚悟で言ったものの、謙信くんは目を大きく見開いた後、「勘弁してくれ」と呟いた。

私の顔を胸に押し当て自分の顔を見えなくし、「そういうのがヤバイんだって」と付け足して。

昨日までの私が今の私を見たら、腰を抜かすほど驚いちゃうかもしれない。

けれど臆病でなにも言えなくて、人との距離を取ってきた自分や、好きなのに我慢して気持ちを押し殺していた自分より、断然今の自分の方がいい。

私自身が私のことを好きになれる。

だからこれからは素直な気持ちを伝えていきたい。これからもずっといっしょにいたいと思える人だから。
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