ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

用意に三十分以上かかってしまい、慌ててリビングへ行くと謙信くんはソファで経済新聞を読んでいた。

「ごめんね、謙信くんお待たせ」

だいぶ待たせてしまったよね。

声をかけると新聞から顔を覗かせた彼は私を捕えると、目を丸くさせた。

けれどなにも言うことなく、ただジッと見られるばかり。……もしかしてこれ、似合わないかな？


必死に悩んで決めた服は、花柄のワンピース。スカート丈が長めだし、これで買い物に行っても変じゃないと思ったんだけど、だめだった？

不安がよぎり、「謙信くん……？」と名前を呼ぶと、彼はハッとし立ち上がった。

「ごめん、すみれがそういう服着ているの新鮮だったから」

確かに私はいつもラフな服装ばかり好んで着ていた。会社でも当たり障りない服装だし。

「へ、変かな？」

こちらに来た謙信くんに恐る恐る尋ねると、彼は首を横に振った。

「そんなわけないだろ？　似合っているよ。……可愛い」

「あ……ありが、とう」

面と向かって可愛いだなんて。照れくさくて謙信くんの顔がまともに見られない。