私と恋をはじめませんか

私と恋をはじめませんか

きょんちゃんから合コンの日程について打診があったのは、ランチビュッフェの翌週の、水曜日のことだった。

「あ、そうだ。小春、合コンの日程決まったから」

食堂でランチを食べていたら、唐突にきょんちゃんが言った。

「あれ? 小春っち、合コン行く気になったんだ?」

たまたま居合わせた兄さんが、お茶を飲んだ後、目を丸くする。

普段の水曜日は愛妻弁当の兄さんだけど、今日は奥さまの体調が良くないらしくお弁当を断ったらしい。

ちなみに金曜日だけは兄さんが愛妻弁当ならぬ愛夫弁当を作っている、なんとも素敵な夫婦生活を送っていて、うらやましい限りだ。

「うん。ちょっと新しい出会いを探してみるのもいいかなと思ってね」

「そっか。ま、きょんちゃんの紹介だったら変な男には会わないだろうけど、気をつけるんだぞ」

自分のお兄ちゃんでも言わなさそうな優しいことを言ってくれる兄さんに、思わず感動してしまいそうになっていると、きょんちゃんも同じような顔で兄さんを見つめていた。

「私、本気で兄さんが兄さんだったらって思っちゃったよ……」

「きょんちゃん、私はお兄ちゃんいるけど交換したいって思ったよ……」

「お前ら、話がずれてるぞ。そもそも日にちまだ聞いてないだろ」

的確な兄さんのツッコミに、きょんちゃんが我に返る。

「そうだった。あのね、七月の三連休前の金曜日でどうだろうって調整してるんだけど」

「うん、わかった。今のところ用事もないし、私は大丈夫だよ」

「オッケー。じゃあ、向こうにも伝えておくね。後は、うちの課の先輩が参加する予定だから」

「やっぱり結衣ちゃん誘うのは止めたんだ?」

「小春と兄さんは知らないと思うけど、月曜日に松嶋くん、わざわざうちのフロアにやってきたのよ。で、『頼む。三枝は連れて行かないでくれ』って頭下げられたらねぇ」

どうやらあの時の情景を思い出したらしく、きょんちゃんがクスクスと笑いだす。

直接見てはないけれど、なんとなく松嶋くんの必死な顔が想像できるなあ。

そう思っていたら、きっと兄さんも同じだったのだろう。私と同じような顔をしていたので、お互い指を指して笑ってしまった。

「兄さんも想像しましたか。松嶋くんの顔」

「もちろんだとも。で、きょんちゃんのことだから、松嶋に何か言ったんだろ?」

ニヤリ、と笑ったきょんちゃんの顔に、何だか嫌な予感がする。

「結衣の誕生日までにケリつけろってハッパかけといた」

「結衣ちゃんの誕生日って、九月?」

「そう。だから、あと二ヶ月くらい? 告白も出来てなかったら、その時は誰か紹介するからねって脅しておいてから、きっと動くでしょ」

「……さすが、きょんちゃん」

「絶対、敵に回したくないな」

呆然としていたら、さっきまでの話題の主、松嶋くんが食堂に現れた。
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