クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~

1、4、1…4。それから『呼出』ボタン。

マンションのエントランスで、私は応答を待った。すぐに有馬さんの声が答えた。


『はい?』

「あっ、あの、園の、倉田です。先程はありがとうございました。夜分にすみません。お礼をお伝えしたくて」

『………』


操作パネルにはカメラがついている。向こうには、こちらの顔が見えているはずだ。だけど私には有馬さんの様子はわからない。沈黙が終わるのを待つしかなかった。


『あの、律己がもう寝てるんで』

「そうですよね、こちらで失礼します。まずお礼をと…」

『いや、上がってきてもらっていいですか?』

「え?」




14階に到着すると、有馬さんがドアを開けて待ってくれているのが見えた。


「走らなくても」

「でも」


急いで彼のもとへたどり着くと、彼がちょっと部屋の中を振り返ってから、玄関前のポーチへ出てきてくれた。


「大変でしたね」

「いえ、有馬さんのおかげで救われました。本当にありがとうございました」

「あの子、翔太くん? 大丈夫だったんですか」

「それが…」


言うだけ言って有馬さんが消えてしまった後、翔太くんのお母さんは落ち着いたように見えていたのだけれど、やっぱり憤懣やるかたない思いがあったようで。

『園医って町医者でしょ? そんなものに診せられません』と言って到着したタクシーも跳ねつけ、歩くと歯が痛いと訴える翔太くんの手を引いて帰っていってしまったのだ。

今まで私が帰れなかったのは、その後職員会議が開かれたからだ。

それを聞いた有馬さんは、ぽかんとした。
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