クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
彼女の顔が恐怖に引きつるのを見て、しまったと悔いた。

懐中電灯の青白い明かりの中、屈み込んで莉々ちゃんの目を見る。


「大人はね、危ないときどうすればいいか知ってるから、大丈夫なの。絶対けがしない」

「もししたら?」

「先生が包帯巻いてあげるよ、私、そういうの上手だから。忘れちゃった?」


肩に手を置くと、震えているのがわかる。納得しきってはいないだろうに、莉々ちゃんは健気に涙を飲み込んで、こくんとうなずいた。


「先生たちのお部屋戻ろう。髪の毛結び直してあげる。お団子とおさげ、どっちがいい?」

「おだんご」


事務室に戻る途中、玄関ドアがガタガタと不安になるほど揺れているのを見た。停電でオートロックが解除され、後付けの暗証番号式のドアロックだけで押さえつけている状態なのだ。

急に心細くなった。

もし今、あのドアのガラスが割れたりしたら、私は莉々ちゃんを連れて、正しく対処できる? もし通電トラブルで火災でも起きたら、この嵐の中、どう行動するのがベストなのか、わかっている?

次々襲ってくる最悪の想像は、打ち消すのが間に合わないほどだった。

私だけで、本当にこの子を責任持って守れるの?

せめてあとひとり、誰か大人がいてくれたら。

誰か。

突然、ガン!となにかがドアにぶつかったような音がした。

びくっとして、思わず莉々ちゃんの手を握りしめてしまう。

ガタガタとドアが揺れ、それが風のせいだけではないことに気がついた。

──外に人がいる。

背筋が冷たくなった。台風とか停電とか、危険はそんなものだけじゃなかったんだ。こんなことも起こり得るんだ。むしろこれが最も、私じゃ太刀打ちできない危機なんじゃないのか。

足が竦んで動けない。なにしてるの。しっかりしなさい。
< 80 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop