君が見せてくれた、私の世界
「ここに来る前に、直央の友人たちが家にお線香を上げに来てくれたんです。
…その中にいた女の子は、直央の仏壇の前で泣き崩れていました。」


「……そう、ですか…。」


「てっきり、想世架さんもそうかと思いましたが…違うのですね。」


「……。」



私が、あの泣いた日から…泣かないのは。
きっと、元々の覚悟があったからだと思う。

小さい頃から、死に対する免疫がそれなりにあったから……。



「…私は、死に対する免疫がありますから。」


「免疫、ですか…?」



驚いた顔をする、お父さん。
無理もない。
死への免疫がある人なんて、限られてくるんだから。



「はい。
いつ死ぬか、分からない恐怖は…知っているので。
大切な人を置いていかなければならない辛さは、普通の人より知っています。
だから……あまり、取り乱さないんだと思います。」



少し冷たい人に思われるかもしれないけど。
淡々と、言葉を続けていった。

でも、本当のことだから。
お医者さんとかが、患者さんの死に取り乱さないのは…もう慣れてるから。
死、がどういうものなのかを分かっているから……だと、私は思う。





< 233 / 312 >

この作品をシェア

pagetop