君が見せてくれた、私の世界
「…チッ、なんだよ。」


「あ、やっと見てくれた。」



イライラを隠しきれず、女を睨みつける。
頼むから早くしてくれねぇか。

そんな俺の思いとは裏腹に、女は微笑みながら話を続ける。



「冷泉くんって、帝都医大の推薦もらえたんだよね。
私も、帝都医大に進むの。
だから挨拶だけでも…って思ったんだけど、急いでるみたい…お邪魔だった?」


「見て分かるなら話しかけんな。」


「やだ、ごめんなさい。
私…明智 巴。
よかったら、名前だけでも覚えてくれたら嬉しいわ。
それじゃあ、失礼。」



くすっと、笑うと女はすぐに踵を返した。


なんなんだ……?
不思議な女…。

だが、生憎。
想世架以外の女に興味のない俺は、女の名前なんか既に抜けていて。

早く、課題を済ませることに念頭をおいた。




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