クールな御曹司の一途な独占欲
私のプライベートなことで本部長に取引先とギクシャクさせてしまうわけにはいかない、そう思って、抱き締められたまま顔を上げて彼を見上げ、「そんなのダメです」という代わりにフルフルと首を横に振った。
すると本部長は私の前髪を優しく撫でて、囁いた。
「ハルカは何も心配しなくていい」
私の名前を呼ぶ、甘い響き。
甘い言葉。
「ほら、牧田さん、分かったデショ?彼女のことは諦めて今日は帰ってね。・・・次にハルカの前に姿を現したら、僕も考えるから」
牧田さんはだんだんと怖じ気づいた表情になり、路地から出て行った。
気がつかなかったけれど、小雨がふっていた。
私は慌てて折り畳み傘を開くと、本部長のこともそこに入れた。
「本部長・・・すみませんでした・・・」
「帰ろう。話はそのあとにしよう」
私に傘をささせたまま、本部長はポケットに手を入れて歩き出した。
怒ってる・・・?
しかしこれ以上すみませんと言い続けるのもしつこいはずだ。
かといって、なんだか「ありがとうございました」と言えるような雰囲気でもない。
帰ってから話す、と言っているのだから、私も今黙ってそれに従おう。
・・・ん?
帰るってどこへ?