マドンナリリーの花言葉


「どうした? 君も準備をしないと。食事を終えたら準備で、午後になったら出発だぞ?」

「あ、はい」

「どうかしたのか?」

「いいえ。……すぐに準備いたします」


ローゼは逃げるように走り出した。

クルトの言葉が、思ったより胸に刺さっていた。
物語の中の世界のような貴族のお屋敷で働きたい。きらびやかな世界の一部として存在したい。
それはローゼの純粋な願いだったが、人の目には違うように映るのだと思い知り、愕然としている。


(私、本当に夜会になんて出てもいいのかしら。分不相応な私がいたら、エミーリア様に迷惑をかけるだけなんじゃ……)


エミーリアの部屋に戻ってからもその思いは変わらない。
メラニーによって髪が整えられてからは余計だ。鏡に映る綺麗な自分が、ただ嬉しいだけのものではなくとても罪深いもののような気がしてくる。


「いいわね。綺麗になったわよ、ローゼ。じゃあ行きましょう?」

「はい」


前を行くエミーリアも肩の出たデザインのロングドレスだ。濃紺のベルベッド素材でシンプルだが気品がある。胸元の花飾りと同様の花が編み込まれた髪にも飾られている。


「奥様の髪が崩れたら、あなたが直してね」


メラニーに微笑みかけられ、ますますプレッシャーを感じてしまう。

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