マドンナリリーの花言葉


ギュンターを交えての会食は、和やかに……とはいかなかった。


「先ほどのメイドを、ベルンシュタイン家でもらい受けることはできないだろうか」


ギュンターの申し出に、フリードは目を点にして、エミーリアは眉を吊り上げた。
ディルクも内心ではかなり驚いたが、表情には出さずにいた。


「やっぱり。ローゼを気に入ったのね。見損なったわ、お兄様。しかも屋敷に連れて帰るなんて、お義姉さまが可哀想だと思わないの?」


遠慮もなく非難してくる妹に、ギュンターは慌てて弁明する。


「エミーリア、誤解だ。彼女、頼まれて探している女性に似ているんだよ。名前も分からない、手がかりの少ない女性でね。顔が似ているだけでも収穫だと思ったら焦ってしまってね。さっきは驚かせてしまって悪かったよ」


エミーリアはまだ不審げなまなざしを向けていたが、ひとまず落ち着いて話し出す。


「どなたに頼まれたのですか」

「それは内密の話だ。今はまだ言えない」

「なんか怪しいわね。ローゼは綺麗な子だもの、見とれてしまうのも見初めた人がいるのも分かるけど。あの子はうちで預かっているんだから、屋敷に連れ帰るとかは駄目よ」

「ずっとじゃなくてもいい。とりあえず数日でも。もちろん送り迎えはこちらでやるし、メイドが足りないというならベルンシュタイン家から貸し出してもいい」


エミーリアを無視する形でフリードに提案するギュンターに、フリードは苦笑した。
フリードとしては、ギュンターの機嫌は損ねたくないが、妻の機嫌も大事だ。


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