ハニー♡トースト


私たちは3階まで上がり、曲がってすぐのところの部屋で立ち止まった。奥にもう一室あるが、そこは社長の部屋だろうか。


「失礼します、お坊っちゃま。根本です」


トントン、とノックしながら根本さんは言った。


「入れ」


根本さんは扉を開き、中に入る。私もつづいて入った。


私の貸してもらった部屋の倍以上ある部屋。ものはあまり置いてないが、真ん中に大きなソファが置いてあり、そこに寝そべってこちらを見る人がいた。


神宮寺家の一人息子、神宮寺 朔弥。


白い肌の小さな顔に、少し茶色がかった髪の毛、大きな目、スッとした鼻。とても、整っている。


これが世に言うイケメンか…


1人で納得していた私の脇を根本さんがつつく。


「挨拶」


根本さんの鋭い眼光にハッとする。


「本日付で働かせていただきます、桜田日向子です。よろしくお願いします!」


「歳は?」


「あ、16です。」


「ふーん、じゃあ俺と一緒だ」


そう言うと彼は立ち上がり、私の目の前で止まる。


手が伸びてきたかと思うと、突然顎を掴まれ、顔が無理やり上に引っ張られる。


「ん!?!?」


目の前に、整った顔。思わず、息を止めてしまう。


「…まあまあだな」


「へ?」


今、完全に私の顔見て言ったよね…?


顎を挟む手にグッと力が入り、思わず顔を歪める。


「んっ…」


「いいか、今日からお前は俺専属のメイドだ。こき使わせてもらうからな?」


にやり、と端整な顔が不敵な笑みを浮かべた。


…嫌な予感がする。

< 16 / 233 >

この作品をシェア

pagetop