あたしが彼に惹かれた理由
「と、豊田くん。どうしたの?」



彼が図書室にくるイメージなんて湧かなくてびっくりしてしまう。



「本を返しにきたんだ」


「え?豊田くん本なんて読むの?」


「ははっ。杉浦正直すぎ」



意外すぎて思わず、こんな失礼なことを口にしてしまったあたしを可笑しそうに笑って見てくる。


杉浦とはあたしのこと。
杉浦詩音(すぎうらしの)
なんだか結構可愛らしい名前を付けてくれた両親に感謝をするけど、身の丈にあってないような気がしてならない。



「ごめん……あたし図書委員だけどあまり豊田くんのこと見かけないから」


「あー確かにね。俺深夜に忍び込んでるから」


「し、深夜!?」



あまりに大きな声が出てしまって、慌てて口を手で抑える。



「ははっ。今抑えても遅いよ。だめじゃん、図書委員が大声で話したら」



なんて笑いながらあたしの頭をポンポンっと撫でる。

その手つきに胸がきゅうってなってしまったのは内緒。

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