彼の笑顔に出逢いたい
階段でめぐと別れて自室に戻る。


疲れていたけど、温かいお風呂に入りたかった。


湯船に浸かりながら、さっきの事ばかり思い出してしまう。


彼の腰を手を回し二人乗りをしていたさっきの出来事が頭から離れなかった。


それに、何かあったら電話してこいって言われた。


最初は意地悪を言われたのに、嘘だよって言ってくれた。


初めて出会った時の嫌な奴という印象が、彼に会うたびに塗り替えられていって、今はもう嫌な奴だなんて思わなくなっていた。


無愛想は変わらないのに、その中に優しさを感じている自分がいる。


寮の門の前で自転車を降りた彼は別れ際


「…髪…食ってる。」


伸ばされた彼の手が唇に触れそうで、でも触れなくて…


固まったまま動けない私の心臓だけが、ドクドクと内側から激しく鼓動を高鳴らせていた。
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