たとえ叶わぬ恋だとしても
彼と初めて会話をしたのは、それから一週間後───特別棟の廊下でのこと……




高校生活にもなんとなく慣れ始めたその日、間抜けなことに家の鍵を失くしてしまった



授業中にはポケットの中で、幽かにシャラシャラと音を立てていたから、きっと移動中に落としたんだ


丁度、次の時間が昼休みだったため、友だちに事情を説明し『先に食べてて』と告げて再び渡り廊下へ



そして、探し続けること……かれこれ10分


「無い~~!なんで!?」


何往復しても、それらしい物を見つけることができない



こんなことになるのなら、鈴か目立つ物でも付けておけばよかった


そう悔やんでも、あの鍵に付いていたのは猫のキャラクターの小さなキーホルダーのみ


落ち込んでいる間にも、時間はどんどん過ぎていき、気持ちも焦りを募らせるばかりで



「お母さん今日は遅くなるって言ってたのに~!!
……家入れないとか……」


泣きそうになりながら、もう何度往復したかも分からないその廊下を屈みながら進んでいると───
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