繋がる〜月の石の奇跡〜
短時間で色々なことが起こって頭の中が整理できずにいたえみは、何も食べる気にもなれず、作ったトンカツにラップをかけて冷蔵庫に閉まった。

お風呂に入って、寝支度をしていると、外からざわざわと賑やかな声が聞こえてきた。

えみは、カーテンを少し開けて、大谷の部屋の方を見る。

「もう遅いから大倉の家まで送っててやれよ。」
井上に言う大谷の声が聞こえてきた。

ゆりこは、井上の腕をぎゅっと組んで体をぴたりと寄せていた。

『やっぱりあの二人付き合ってるんだ。』
そんなことを思いながら、えみはカーテンをぴしゃりと閉めた。

えみは、ベッドに入り、そっと目を閉じる。

すると、今日交わした井上との会話が次々に思いかされる。

それなのに、いくら思い出そうとしても井上の顔が思い出せなかった。

どんなに考えても浮かんでくるのは光輝の顔だった。
『光輝。』
えみの目からは一筋の涙が溢れていた。
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