会長代行、貴方の心を全部わたしにください
私はバックから、必要最小限のメイク道具を取り出した。


「えっ!? メイク……会長代行?」


芹沢香生子が目を丸くして、私たちを交互に見る。



「芹沢、半年も側にいて気づかなかったか? だよな、詩乃の腕は完璧だ」


「あの……?」


「言いたいことは解る。すまなかった……身体のことも詳しく話しておくべきだったな」


「会長代行……遠慮なさらず、何でも話してください。スケジュール管理は私の仕事です」


「わかった」


芹沢香生子と由樹のやり取りを聞いていて、私が秘書なら由樹にこんな無茶はさせないのに、と涙が出そうだった。
< 6 / 115 >

この作品をシェア

pagetop