会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「会長代行?……何か考え事でもおありですか?」

「いや……ホッとしているんだ」

俺が言うと、芹沢はクスリと笑った。

「君には見透かされているな」

1人ごちた俺の微かな呟きは彼女に聞こえていないだろうか。

俺はくるりと椅子を反転させ、窓側に向いた。

窓の外に広がる景色は決して、心和むものではなかった。

ビルばかりが建ち並んだ無機質なものだった。

だが、そんな風景でさえも心を癒す効果があるのだと感じた。

いや、芹沢が同じ空間に居るから、窓から見える無機質な風景も違って見えているのかもしれない。

背中に、芹沢の視線を感じながら、俺は俺自身が芹沢を秘書に抜擢したーーーその選択が間違いではないと、感じ始めていた。
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