幸田、内緒だからな!
「わかった。それじゃ、午前中は空いてるね?」
「はい」
「それじゃ、一旦自宅に戻る」
「あ、わたしは同行出来ませんから」

 前もって言っておこう。
 取締役会議の前って、秘書は大変なんだからね。
 時間になったからさあ始めましょうってわけにはいかない。
 直紀は知らないだろうけど、資料を用意したりで秘書は忙しい。
 それに何だかまた、気分の悪さがぶり返して来た。
 朝ごはんを食べて、すっかり良くなったと思ったのに。

「えー」

 その「えー」は、やっぱり帰ったらわたしを抱こうと思ってたって事ね?
 ごめん。
 しばらく無理みたい。

「社長、会議の前は、忙しいんですよ。知らないでしょうけど」
「……だったら帰る意味がない。溜まった書類にでも目を通すかな」
「そうして下さい。部長も困ってましたよ。決裁がなかなかおりないって」

 それではと会釈をし、社長室を出た。
 さてと、資料のコピーでもしますか。
 わたしは、月に1回行われる取締役会議の資料をまとめにかかった。

 コピー機の前にずっと立っていたら、何だかどんどん気分が悪くなる。
 貧血?
 前回の健康診断では異常なかったんだけどな。

 ちょっと休憩しよう。
 コピーを途中でやめ、わたしは休憩室に行った。

 休憩室には、無料の飲み物とお菓子が用意されている。
 残業する人は、19時を過ぎたらちょっとした夜食も無料で食べる事が出来た。

 とりあえずわたしは、オレンジジュースを持って椅子に腰掛ける。
 何だか昨日の一件以来、体の調子が狂っちゃったみたい。
 健康には自信があったんだけど。

 お昼ごはんを食べ、すっかり気分も回復した。
 今年の秋は食欲の秋かな?
 何だかすぐに何か食べたくなる。
 それでもお腹が減ったからといって食べ続けていたら大変。
 すぐに太っちゃう。
 昔から太りやすい体質なので、食事は意識してセーブするようにしていた。

 
 午後になり、社長をはじめ、取締役の面々は会議を始めた。
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