幸田、内緒だからな!
「わかってるさ」

 直紀のマンションに越して来た。

 あれから話はトントン拍子で進み、結婚式はお腹があまり目立たない5ヶ月頃に行う事になり、その前に同棲生活を始めた。

 
 会社の人に知らせた時、最初は恥ずかしかったし皆に受け入れてもらえるか心配だったけど、ピシャリと直紀は朝礼の席で言ってくれたんだ。

「今日は皆さんに報告があります。わたしく藤堂直紀と、秘書の早瀬知花は結婚する事になりました。それから、彼女のお腹には僕たちの子どもがいます。いずれ産休に入りますが、それまでは今まで通り彼女は僕の秘書として働きますので、皆さんのご協力宜しくお願いします。それから、もし彼女に何かあったら、この僕が許しませんから」


「あん、直紀激しくしちゃダメだって」
「激しくないだろ?」
「あんまり揺らしたら、赤ちゃんが驚くでしょ」
「あー、早く生まれないかなー」
「まだまだよ」
「あー、思いっきりしてぇーーー」

 相変わらずの野獣だけど、そんな直紀が大好き。


 結婚式まであと半月となったある日。
 わたしは実家に戻った。
 母は相変わらずパートを続けている。
 だけど、わたしの食事を用意する事がなくなってからは、よく友達と飲みに出掛けたりしているようだ。
 わたしの為に頑張って働いてくれた母。
 自分の楽しみは我慢して、わたしの事を最優先に考えてくれた母。
 そんな母に、わたしは何の親孝行もしていない。
 先日その事を話したら、直紀さんと結婚して幸せに暮らしてくれたらそれが親孝行よって言ってくれた。
 あと半年もしないうちに孫も生まれる。
 きっと孫を抱いたら、もっと幸せな気持ちになれるはずだよ。

「あら、今日直紀さんは?」
「明日まで出張なの」
「あなたはついて行かなくて良かったの?」
「うん。移動が多いから、体に差し支えたらいけないからって」
「相変わらず優しいのね」

 今日はお母さんに大事な話があって来た。
 お母さんは怒るかもしれない。
 でも、わたしがしたい事。

「お母さん、結婚式の事なんだけどね」
「何?」
「お父さんを、呼んでもいいかな?」
「えっ?」
 
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