幸田、内緒だからな!
「知花の、父親だからです。娘を宜しく頼みます」
「はぁ? どういう事??」
親戚一同には前もって会長から話してもらった。
あ、いけない。
お父さんって呼ばなきゃね。
父の事を知らなかったのは直紀ただひとり。
動揺がもろに表面から溢れ出している。
藤堂のお母さんに至っては、口元を押さえてはいるものの、周りに声が漏れるくらい笑っている。
わたしの母も苦笑い。
「知花、どういう事? お父さんって、何?」
「まだわかんないの? だから、幸田正男はわたしの父よ。あなたの運転手でもあるけどね」
「嘘だろ、だって今までそんなそぶりを見せなかったじゃないか」
「隠してたからよ」
「嘘だろう……だって俺達車の中で」
「あ、それここで言っちゃダメだって」
今度はわたしが慌てる。
親戚の前で恥ずかしい事暴露しないで。
それ、絶対マズイから。
「何だよそれ……」
すっかり参っている様子の直紀。
「それではそろそろ始めますが、宜しいでしょうか?」
神父様が困っている。
「お願いします」
それでも直紀の動揺はおさまらず、誓いの言葉を読み上げる時も噛み噛みだった。
いつもは堂々と落ち着いている直紀が慌てふためく姿に、わたしは必死に笑いをこらえた。
長く感じた式が終わり、今度は披露宴会場へと移動する。
「直紀、いい? 中のお客様は事情を知らないんだから、さっきのような動揺は隠すのよ」
「そんな事言われてもなぁ」
「あなたは社長。藤堂社長なんだからね!」
そう気合を入れて、彼の背中をポンと叩いた。
「それでは、新郎新婦のご入場です」
扉が開く。
正面から当てられた光が眩しい。
いざ出陣。
そんな気持ちで歩み始める。
おわり
「はぁ? どういう事??」
親戚一同には前もって会長から話してもらった。
あ、いけない。
お父さんって呼ばなきゃね。
父の事を知らなかったのは直紀ただひとり。
動揺がもろに表面から溢れ出している。
藤堂のお母さんに至っては、口元を押さえてはいるものの、周りに声が漏れるくらい笑っている。
わたしの母も苦笑い。
「知花、どういう事? お父さんって、何?」
「まだわかんないの? だから、幸田正男はわたしの父よ。あなたの運転手でもあるけどね」
「嘘だろ、だって今までそんなそぶりを見せなかったじゃないか」
「隠してたからよ」
「嘘だろう……だって俺達車の中で」
「あ、それここで言っちゃダメだって」
今度はわたしが慌てる。
親戚の前で恥ずかしい事暴露しないで。
それ、絶対マズイから。
「何だよそれ……」
すっかり参っている様子の直紀。
「それではそろそろ始めますが、宜しいでしょうか?」
神父様が困っている。
「お願いします」
それでも直紀の動揺はおさまらず、誓いの言葉を読み上げる時も噛み噛みだった。
いつもは堂々と落ち着いている直紀が慌てふためく姿に、わたしは必死に笑いをこらえた。
長く感じた式が終わり、今度は披露宴会場へと移動する。
「直紀、いい? 中のお客様は事情を知らないんだから、さっきのような動揺は隠すのよ」
「そんな事言われてもなぁ」
「あなたは社長。藤堂社長なんだからね!」
そう気合を入れて、彼の背中をポンと叩いた。
「それでは、新郎新婦のご入場です」
扉が開く。
正面から当てられた光が眩しい。
いざ出陣。
そんな気持ちで歩み始める。
おわり


