【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。



「君、挨拶回りはもう済ませたのか?」

「はなからそんなもの行ってないわ」

「相変わらずだな君は」

「うるさいわね。わたしのことは放っておいてあっち行ってちょうだい」

「君があまりにもつまらなそうにしてるから、わざわざ話し掛けてあげたんじゃないか」


……そんなこと、頼んでもないのに。


「結構よ」

「おい、どこに行くんだ?」


彼の声はもちろん無視して、持っていた皿を近くのテーブルに置いて席をたつ。

誰もいないバルコニーに出ると、ほのかに涼しい風が肌にあたり、いい具合に心地よかった。


「わたし一人になりたいんだけど、何故あなたまで付いてきているのかしら?」

「僕も夜風にあたりたい気分だったんだよ」


……本当に、目障りな男。


それでも同い年ということから、大人の相手をしているよりはまあ楽だったりする。


ご機嫌をとるような言葉もなく、失礼だと思うことも遠慮なく言ってくる彼と話すときだけは、自分も遠慮なく語り合えるのだ。


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