嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜


間を開けず店員さんがビールとお絞りを持って来てくれたので中に入ると、課長の横には佐田さんが座りかいがいしく料理をお皿に取って渡しているのを瞳の端で捉えるけれど、流石に他の女子社員も佐田さんには何も言えないようだ。



美男美女で傍から見てもお似合いだし。



ビールをこぼした木田さんの前のテーブルを拭いて、背広にもかかってしまったというので軽くお絞りで叩いてあげる。

人気者の課長の周りにはあっという間に人集りができて笑いが起こっていた。

隅っこで会費の元は取っておこうと料理を頬張っていると、何故だか賑やかだった部屋の中がしんとなる。

隣の八代くんがわたしのブラウスの袖をツンツンと引っ張った。



沢山の目がわたしに向けられている。



え?


なに?


わたしなんかした?


さっき口に入れたばかりのプチトマトを満足に噛まずにゴクンと飲み込んだ。


喉に詰まりかけてむせると八代くんに背中をバンっと思いっきり殴られてその拍子にトマトが口からポロンと落ちる。
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