こっち向いて笑って、先輩!
「ここ、名前の部分は黒でなぞればいいの?」
「えっ、」
「筆はこれでいい?」
突然、先輩は手を伸ばして旗の色塗りのために使う道具たちを触り始めた。
「あの、如月先輩!」
「2人でやった方が早く終わるだろう。お前1人にさせたらたま途中で寝たりしてそのまま警備員に鍵閉められて朝までここにいるのがオチだ」
「うっ!そ、そんなこと!……ないとは言い切れないです、はい……」
内心、先輩が私のことを少し知ってくれている気がして嬉しくなる。
「スマホ出して」
「スマホ?」
先輩の言葉に頭にハテナを浮かべながらポケットに入ったスマホを取り出す。
「来原の電話番号は」
「えっ、わ、私?の、電話番号?!」
「早く」
「えっと、0xx-xxx-xxxです」
「……」
無言でスマホを操作する先輩。
一体何をしているんだろうか。