fragment
いつまでも蛍に目を奪われているわけにもいかず、足を進め、家屋に向かう。

・・・インターホンというものが見当たらない。

広いポーチの小さな明かりの下で、あるべきものが無く、迷った挙げ句に手にした扉は簡単に開いた。

「すみませーん」

静まり返った家の中は明かりすら灯されて無く、不気味としか言い様がない。

これは仕方ないのだと、不法侵入ではないと自分に言い聞かせ、小さくお邪魔しますと中に足を踏み入れもう一度声を掛ける。

「すみませーん」

留守か居留守か、もう寝ているのか。

どれにしたって玄関を開けっ放しにするのは物騒すぎる。
いや、こんなにも田舎だと物騒なんて言葉とは無縁か。

「はぁー」

やるせない思いにため息を出し、ここに来た目的でもある荷物を玄関先に置く。

こんな狭い町だし、届け人の名前なんていらないだろうとそのまま廻れ右をして玄関を出た時だった。
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