fragment
「よければお焼香させて貰って良いですか?」
「あ、ぜひ。どうぞ玄関から上がって下さい」

松ケ原のじいさんが今年に亡くなり、この夏が新盆であると聞いたのは先月の始めだった。

ここで過ごしていた幼少期の記憶を思い返せば、松ケ原のじいさんとの記憶はそれなりにある。
孫がいたっていう記憶は無いが、それはただ忘れてしまっただけかもしれない。

まぁさすがに会った事はないだろうけど。

案内された部屋には立派な仏壇と沢山の供え物が乗った盆棚が設置されていた。

遺影の中のじいさんは、俺の記憶の中のじいさんより少し老けただけで、病気だったなんて聞かなければ判らない程あの頃と同様凛々しいままだった。

まさか、こんな形で再会するとは思っていなかったな。
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