愛すべき、藤井。



『試着してみてよ!サイズ合わなかったら手直し必要だから』なんて、上手く乗せられて着てみたのはいいけれど、


「可愛い」

「……っ、あ……ありがとう」


神田くんの分かりやすい社交辞令にすら照れてしまうくらい、ドストレートな褒め言葉には慣れてなくて、

嬉しいような、恥ずかしいような気持ちが私を支配する。



「そうだ、藤井呼ぼうか?せっかくだし、見せたいっしょ?」

「え……いや!いい、本当に大丈夫!!」

「いや、でも藤井見たいと思うよ?」

「ないないない!私のドレス姿なんて一生興味無いってアイツ」


藤井とは、あの謎のキスハプニング後もやっぱり今まで通りで。

何なら、あの日の別れ際だって『気ぃ付けて帰れよ〜』とか何とか言いながら、ヒラヒラ片手を振る藤井に『あいよ!また明日ね』と私も片手を振って別れたっけ。


私のこと女として意識したとか言ってたけど、あれ絶対気のせいだからね!!


女として意識した相手を、家まで送らないとかジェントルマンじゃなさすぎだろ。


藤井なんか、若ハゲに悩めばいい。
そろそろライダーキックの練習しなきゃ。


無事に習得出来た暁には、藤井の背中めがけて最高のキックをお見舞いしてやろう。

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