愛すべき、藤井。

「あ、図星だ」
 
 
黙り込んだ私に、そう言って笑い出した立花くんにそろそろ殺意がわいてきた。

 
そりゃ、立花くんは狙った女の子は必発百中かもしれませんけど?


少女マンガじゃないんだから、そう簡単に好きな人と両想いでした~!なんてHAPPYENDは凡人夏乃ちゃんには待ち受けてないのだよ、立花くん。
 
 
「立花くんみたいにモテる人にはきっと一生分からないよ。振られるとか縁のない話だろうし!」
 
 
ほんの少し嫌味っぽい言い方で口を尖らせた私に、立花くんはフッと小さく笑った。
 
 
「俺はそもそも人を好きになったことないから。うらやましいな~って思うけど。そういうの」
 
「は??だって中学の頃から立花くんっていつも彼女いたじゃん」
 
「彼女はいても、俺がその彼女を“好き”とは限らなくね?……そもそも、“好き”って何かいまいち良く分かんねぇし」
 
 
……まじか。
好きじゃなくても付き合えるってこと?それはそれで悲しい気がする。
 

お互いがお互いを想い合ってるからこそ、“付き合う”ってことに意味が生まれるもんだと、私は信じて疑わなかったから。
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