愛すべき、藤井。
夏乃を意識してるっつーか、なんつーか。
「……夏乃相手でも欲情するってことには、気づいたって言うか」
ゴニョゴニョと、後半ほぼ聞こえたか謎なレベルで呟けば、自分の体温がグッと上昇したのが分かった。
それと同時に、隣で神田が「はっ?」と目ん玉落ちそうなくらい目を見開くのを見て
あー、言わなきゃよかったって瞬時に思った。
「まさかと思うけど、何かした?伊藤のこと押し倒したとか?押し倒したとか?押し倒したとか!!」
「倒してねぇよ!!!まだ」
「まだ??」
「いや、まだって言うか……変なこと言うなよ、アホ!!」
「さっきから1人で興奮してペラペラ変なこと言ってんのは藤井だからね?」
くっそ、神田。
そのニヤニヤした顔が腹立たしい。
「それから」と続ける神田にもういいよ!何も言うな!って言いたかったけど、それより先に神田が口を開いて、俺はスグそこまで出かけていた言葉を飲み込んだ。
「"夏乃相手でも"とか言うけど、藤井が他に欲情する子って、存在すんの?」
「……っ」
そんなの考えたこともなかった。
夏乃以外に、俺が欲情する相手……?いや。いないわけないだろ、俺も男だし。可愛い女の子見たらそりゃ欲情くらい……。