愛すべき、藤井。


ふぅ、と一呼吸置いて


「夏乃」


名前を呼べば、



「なに」



当たり前みたいに返事が返ってくる。
たったこれだけのことを、どれだけ恋しく思っただろう。




……伝えよう、



そう思うのに、気持ちがまとまらない。



「俺、夏乃のこと大事だよ」



バクバクうるさいのは、俺の心臓なのか、夏乃の心臓なのか。



『大事』にだって種類はある。

そう神田に言われてから、ずっと考えてた。


『本当はもう答え出てるんじゃないの?』

そうみいに言われてから、ずっと考えてた。


『好きだから悩んでるんでしょ?』

そう香織に言われてから、ずっと考えてた。



そんで、やっと……やっと分かった。


……何をしてても、頭の中にはいつも夏乃がいて。忘れる暇もなくて、苦しかった。


声が聞けたら嬉しくて、会えたらドキドキして、抱きしめれば安心して、今だって理性ギリギリ保ってる。



もう、言い訳なんて1つも出来ないくらい




「ありがと」






───俺は、夏乃が好きだ。


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