愛すべき、藤井。


私は、この家に生まれて良かったって思うし、両親のことが大好きだから、それを良い意味で受け取ってお礼を言うのがお約束だ。


「じゃあ、ママ行ってくるからね」

「行ってらっしゃい」


きっと、今日はパタパタといつもより早く仕事を切り上げて、私の食べられそうなものを両手いっぱい買って帰ってきてくれるんだろうなぁ……なんて、部屋を出ていくママを見送りながらフフッと笑いが零れた。



───ブブッ


枕元に置いてあったスマホが振動して、反射的に手を伸ばせば液晶画面にメッセージが表示されている。


【立花 祐也:昨日は助かった!記憶ほぼねぇけど、起きたら熱下がってた。飯、美味かった。】



チャラ男にしては、いつも絵文字も顔文字もない立花くんからのLINEを見ながら、自分は高熱におかされているっていうのに、良かった〜なんて思うから、


やっぱり私は度の過ぎたお人好しだ。



【良かった!無理しないでね〜✌︎︎】



それだけ返信して時計を見れば、スマホの右上に7時45分と表示されている。


あと15分で、いつもなら藤井が家に迎えに来てくれる時間だ。


でも、昨日のあの感じじゃどうせ藤井は迎えに来てくれないだろうし、わざわざ熱が出たから休むって連絡するのも、心配してほしいイタイ女っぽくて嫌だ。



「会いたい……」



ボソッと零れた本音は、熱で弱っているせいってことにして、私はスマホを枕元に放り投げて毛布を口元までかぶった。

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