愛すべき、藤井。
もう、これは重症だよ、私。
「……バカ、泣くなよ?まだ話の途中だろーが」
「っ、ん……がんば、る」
「……泣いたら襲うからな」
「フハッ、藤井が襲うとか言うと、ギャグにしか聞こえな」
───ドサッ
「……だから、夏乃は俺の前で油断しすぎ。目の前で、ましてやベッドの上で、好きな女がこんな無防備なら、さすがに俺も男になる」
「……へっ!?」
さっきまでベッドのすぐ側で、私の手を握りながら話していたはずの藤井が、一瞬で私をベッドに押し倒して、
藤井が私を上から見下ろしたとき
わ……デジャヴ!って、思った。
そんな私に気づいたのか、昨日の立花くんと同じように私の顔の両側に手をついた藤井が、眉間にシワを寄せた。
「今、一瞬でも立花のこと思い出しただろ?」
「……っ!」
「まじでやだ、無理。昨日の記憶消せ」
「む、無茶言わないでよ……、ってか!藤井さっき『好きな女』って言った…?それって」
「ったく、押し倒されてもよく喋る。危機感が足りねぇんだよ、夏乃は」
「……だって、藤井が気になること言うから。ってか、じゃあどいてよ!話の途中なんでしょ?」
少し甘い雰囲気になった気がしたのも束の間、やっぱり私と藤井の間に、そんな空気が流れるわけなかった。