愛すべき、藤井。


この前、美和子さんが言ってたみたいに、本当に藤井の中では『男女の友情論』は成り立つんだと思う。


男か女か……じゃなくって、好きか嫌いか。ただそれだけの基準でしかない。

男だろうと、女だろうと、相手に対する『好き』の感情は『LIKE』でしかないのだ。



藤井にとっての『LOVE』はどこにあるんだろう。彼女が欲しい……なんて言う割に、『好き』の意味をイマイチ理解してなさそうな藤井に、少しだけホッとしてしまう。


今の関係が壊れて友達に戻れなくなるのは嫌だけど、誰か1人の藤井になってしまうのは、もっと嫌だと思うから。……なーんて、わがままなのかな。


誰か1人の藤井になるなら、その1人は私であって欲しい。……欲張りなのかな。


「んじゃあ次のページを藤井、朗読してみろ」

「……ゲッ」

「まさか読めないとか言わないよな、藤井」



消しゴムを落としたのが運の尽き。先生に当てられた藤井は今日も真っ青になって教科書を見つめている。

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