涙のあとで、風は吹く。
 あぁ、別にね、君のせいじゃないんだ。



 「今日はよく晴れてたね。よかった」



 歩きながら自分のスニーカーを見つめていた僕は、空を見上げて呟いた。


 昨日までの台風が嘘だったかのように、深い紺で塗りたくられた空には小さく輝く星がいくつも散りばめられている。


 しばらく歩くと、見慣れた墓地が見えてきた。


 墓地の入り口を入ってすぐ右側、小さな倉庫の中に積み上げられた柄杓の一つを手に取ると、その横に取り付けられていた水道の蛇口を捻り、水を汲む。



 「香穂、元気してる?」
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