スノードロップの花言葉(仮)
あたしは、またコツコツとヒールの音だけを響かせながら上を目指す。


明らかに下とは雰囲気が変わった扉。


ここか…奴の居場所は。


ーガチャッ


扉を開けると大きなソファーに体を沈めている1人の男が驚いて固まっていた。


「だ!誰なんだ!アイツ等はどうした?!」


ハッとして叫ぶ男。


「10年前の事…忘れちゃったとは言わせないよ?」


ブラックローブのフードを取って男を蔑んだ目で見つめた。


「じゅ、10年前だと?なんの話だ?」


あっそ、あんたにはそんくらいの小さな出来事だったってわけね?


じゃあ、思い出させてあげるよ。


「10年前、蛇裏亞に狙われた男がいた。
たまたま麻薬取引の現場を目撃してしまったのが始まり。
蛇裏亞は当時から悪い噂しかなくて、警察でさえ恐れていた族。
その蛇裏亞はその男の家族もろとも殺した。
でも、"生き残った女の子"がいた。
それを、あんた等警察は容疑者にした。
何ヶ月も取り調べ室に閉じ込め尋問し続けた。まだ、5歳くらいの女の子相手に…
おかげでその子は人間不信になった。
まぁ、身寄りもないその子は施設に連れて行かれた……。
その時、現場検証に来た警察官の1人があんたでしょ?」


あたしは、ニッコリ笑って首をかしげた。


「ま、まさか!その時の"生き残った女の子"だと言うのか?でも、俺は現場検証に来た中でも下っ端だった。俺は関係ない!それに、女のお前が1人で警察官の俺に勝てるのか?」


不敵に笑った男。


「全員破滅に追い込むって決めた。あの時、あの瞬間!残念な事にこの10年、1度たりとも1人も忘れたことがない。…立たなくていいのか?自殺行為だな?」


ため息をついて立ち上がった男は、ニヤッと笑った。


「1人目〜♪」


その声と同時に男は倒れ込んだ。


その部屋の壁にも大きくスノードロップの絵を描いて消えた。
< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop